T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

税理士試験の科目別学習ポイント(財務諸表論編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は財務諸表の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

財務諸表論は大問三問の構成で配点は第一問25点、第二問25点、第三問50点と毎年決まった問題構成となっています。

(2) 第一問、第二問

第一問と第二問は理論です。空欄補充問題、選択問題と数行程度の記述式の問題が数題出題されます。

(3) 第三問

決算整理型の総合問題形式で貸借対照表損益計算書を作成させる問題が毎年出題されます。これに明細、キャッシュフロー計算書や注記などの作成が加わることがあります。

 

2. 難易度

財務諸表論の合格率は15-20%程度と他の科目と比して高くなっています。理論は税法と比べると暗記量も試験での解答量も少ないです。計算は出題形式も難易度も一定で、簿記論の第三問より易しく高得点が取りやすいです。

税理士試験の登竜門的な科目で、全科目で最も合格しやすい科目といってもいいと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 簿記論との同時学習

財務諸表論は簿記論との同時学習が効率的だと言われています。理論を学習することで計算の理解が深まるという面もありますが、簿記論を学習していれば財務諸表論の計算の学習が最低限でよく、2科目合計での学習時間が少なくなるというのが最大の利点です。1+1=1.5になるイメージです。働きながらでも簿財同時合格を狙うことが可能で、実際に働きながら簿財同時合格をした人も多いようです。短期間で官報合格を果たすためには1年で簿財両方の合格を目指すのが効率的です。

ただし、同時学習によりそれぞれの科目の合格の可能性が高まるものではないと思います。以下の記載は簿財同時学習を前提としています。

 

(2) 計算問題の傾向

財務諸表論の計算問題は、問題形式も難易度も安定しています。簿記論の総合問題より易しいので本番では40-45点が目標となります。簿記論との同時学習又は簿記論学習後である場合には、財務諸表論の計算にはあまり時間をかける必要がありません。答練高得点を取れている限り復習も最低限で構いません。ただし、簿記論では学習しない注記は油断せずに書けるようにしておきましょう。毎年出題されるものではありませんが、出題された時に差がつきます。

 

(3) 理論問題の傾向

税法では何十題もの理論暗記が必要で、試験でも理マス・理サブ数ページ分の解答が求められますが、財務諸表論の理論はそれほどの量はありません。また、事例問題は出題されません。

空欄補充問題や選択問題が多く出題されます。会計用語や会計処理の理由や背景を会計基準の記載に従って確実に覚える必要があります。記述式問題の1問当たりの解答量は数行程度です。また、近年では概念フレームワークからの出題が多くなっています。

 

(4) 時間配分

時間配分は理論40-50分、計算70-80分が標準的です。理論は記述量が多くないのでそれほど時間がかかりません。理論⇒計算の順で解く人の方が多いと思います。注意点は選択問題で悩みすぎないことでしょうか。計算に十分時間をかけて高得点を取りましょう。理論の時間に注意して答練を解けば時間配分は身に付くと思います。

 

4. 学習方法

(1) 計算

計算については、簿記論の学習していることを前提に、予備校の問題集や答練をスケジュール通りにやっていれば自然に合格レベルに達することができると思います。簿記論や税法の計算問題では初回を合わせて最低3回は解く必要があると言われていますが、簿記論との同時学習であれば、初回で高得点が取れたものについては解き直す必要はなく、それ以外の答練を1度解き直せば十分ではないかと思います。

 

(2) 理論

理論は税法に比べると量は少ないのですが、理論の学習自体が初めての人にとっては理論の学習は難しいと思います。

本番の試験では語句の空欄補充問題が多く出ますので、まずは会計用語を正確に覚える必要があります。

選択問題では理論の理解が問われます。講義やテキストで理論の理解を深めておかなければ選択問題を正解するのは難しいです。

記述問題では、理論テキストのポイントに記載されている内容がそのまま問われることも多いです。講義やテキストで内容を理解しつつ、ポイント部分は暗記しましょう。記述問題ではある程度自分の言葉で書いても大丈夫ですが、会計用語は正確に使う必要があります。

 

近年の試験では概念フレームワークからの出題も多いです。概念フレームワークに出てくる用語の暗記や内容の理解も重要です。

予備校の講義で解説を聴いた後、一度原文に目を通しておくことをお勧めします。40ページ程度ですのでそれほど分量は多くないです。

討議資料「財務会計の概念フレームワーク」の公表|企業会計基準委員会:財務会計基準機構

 

財務諸表論の理論学習では、予備校の理論テキストの内容を暗記していくことになります。税法と異なり財務諸表論は理論テキストのみで予備校が暗記用に理論をまとめてくれた理論マスターや理論サブノートはありません。私は、テキストのポイント部分のみを抜粋し、まとめノートを作成するのがいいと思います。以前の記事で書いた間違いノートに似たものです。

 

引当金を例にするとこんな感じです。

引当金

・意義 引当金とは、①将来の費用・損失を②当期の費用・損失として③あらかじめ見越計上したときの貸方項目

・計上要件 ①将来の特定の費用又は損失、②その発生が当期以前の事象に起因、③発生の可能性が高い、③金額を合理的に見積もることができる

・計上根拠 ①適正な期間損益計算を行うため、②発生主義の原則を根拠

 

5. 予備校の活用と学習スケジュール

会計理論の学習は会計処理のみの習得で済む簿記の学習とは大きく性質が異なります。市販のテキストもありますが、独学で理解するのは容易ではありません。予備校の講義を受けた方が効率的です。

簿記論との同時学習の場合、財務諸表論のボリュームを考えると年明けからの速習コースでも間に合います。実際に年明けからの速習コースで合格した人も多いと思います。とはいえ、年明けからの学習開始は、働きながら簿財同時合格を目指すにはぎりぎりのスケジュールです。理論の習得に手間取ると本番に間に合わなかったり、簿記論の学習にしわ寄せが来たりする恐れがあります。財務諸表論も9月から学習を開始して理論を回す回数を多くすることを強くお勧めします。

 

私は、財務諸表論の学習を1月から開始して8月の試験で合格しましたが、簿記論は不合格でした。簿財同時合格が出来なかった理由の一つは、年明けから財務諸表論の理論学習に時間を取られ簿記論の学習が十分ではなかったことにあると思っています。

 

簿財同時合格をするためには計画的に学習を進めましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。