T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

税理士試験の科目別学習ポイント(法人税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は法人税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

法人税大問二問で、第一問が理論で2問、第二問が計算、配点は第一問の問1と問2で合計50点(内訳は非公開)、第二問50点と毎年決まった問題構成となっています。

 

(2) 第一問(理論)

第一問は理論で2問に分かれています。法人税の理論問題は、用語の意義や規定のべた書きの出題もあるものの、事例問題が多く出題され、税務上の仕訳を解答させる問題が出題されることがあるのが大きな特徴です。

 

(3) 第二問(計算)

事例に即して税務上調整すべき金額(別表四)を解答する問題が毎年出題されます。合わせて利益積立金額や資本金等の額(別表五(一))の作成が加わることがあります。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税の最大のポイントは試験範囲が膨大であるという点です。合格レベルに達するまでにかなりの学習量を必要とし、合格までに長年かかっている人も多いです。

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

 

(2) 合格率

合格率は11-13%のことが多く他の科目と同レベルです。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

科目別の受験者は以下の通りです。

法人税は、会計科目と消費税に次いで受験者数が多い科目となっています。毎年、所得税のおよそ3倍の人が受験しています。

 

法人税は会計科目の次に最初の税法科目に選択する人が多いです。税法初学者が相当数いるため会計科目ほどではありませんが受験生のレベルはそれほど高くはなく中程度と思います。

 

(4) 合格可能性

試験範囲が膨大なため習得するのに時間がかかります。しかしながら、受験者の絶対数が多く、受験生のレベルが中程度であることから、ミニ税法と異なりワンミスが致命傷になるようなことがありません。また、試験問題もオーソドックスなものが多く成績上位者から順当に合格する科目と思います。

 

3. 法人税所得税

税理士試験で官報合格をするためには、法人税所得税に合格する必要があります。どちらを選択した方がいいでしょうか?

法人税所得税では合格に必要な学習量に大きな差はないようです。

両科目を学習する人は、法人税所得税の順番が多いようですが、所得税法人税の順で学習する人は多くないようです。

受験者が多いことと初学者が多いことを考えると、私は法人税の方が合格しやすいのではないかと思います。

とはいえ、学習量や難易度に大きな差はないようですので、個人の好みによります。

 

4. 法人税を何科目目に学習するか

法人税を何科目目に学習するかは、社会人が税理士試験を早期に合格するために重要な要素となります。1,2科目目は簿記論と財務諸表論になりますが、法人税を3科目目とするか、先に別の税法を学習するかが問題となります。法人税の試験の特徴も踏まえ以下の点がポイントとなります。

  • 法人税1年目は法人税1科目に専念した方がよいです。試験範囲が広く、働きながら複数科目を学習して、1年で法人税の合格レベルに達するのはかなり難しいです。
  • 法人税では、企業の会計処理に基づき税務上の調整を行うもので、会計処理と税務処理の違いを把握して、税務上の仕訳を切ることもあるため、簿記論・財務諸表論の直後に学習した方が効率が良いです。
  • 多くの学習量が必要となるため、モチベーションの高い早期に学習した方が良いです。一般的に年数が経つと勉強に飽きてきたりして税理士試験の勉強へのモチベーションが下がります。モチベーションが下がっていると法人税の合格レベルに達するまでの勉強をするが困難です。
  • 税法初学者には理論学習のハードルが高いため、消費税を先に学習して税法の理論学習のノウハウを獲得してから法人税を学習するのも効率が良いです。

 

上記と1年目の簿記論・財務諸表論の本番の出来を踏まえ、私は、以下のように選択するのが良いのではないかと思います。

(1) 簿記論・財務諸表論ともに合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から法人税に進む

(2) 財務諸表論のみ合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から法人税又は消費税に進む。計算のみの簿記論であれば法人税との両立も可能と思いますが、簿記論の完成度次第と思います。簿記論にそれほど時間をかけなくても良さそうであれば法人税を選択し、簿記論に多くの勉強時間が必要と思われる場合には、消費税を選択するのが良いと思います。

(3) 簿記論のみ合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から消費税に進む。理論のある財務諸表論と法人税1年目の両立は厳しいと思います。

(4) 両方不合格の可能性が高い場合 ⇒ 簿記論・財務諸表論のやり直し税理士試験からの撤退

 

5. 合格への戦略

(1) 会計の知識

上記4でも記載しましたが、法人税は、企業の会計処理に基づき税務上の調整を行うものです。会計処理と税務処理の違いを把握することが重要で、税務上の仕訳を切ることもあるため、会計の知識が必要となります。簿記論・財務諸表論の記憶が薄れないうちに法人税の学習をすることをお勧めします。

 

(2) 理論問題の傾向と学習方法

法人税の理論は125題程度と非常に多いです。

本番の理論問題では、用語の意義や要件などべた書きで解答する問題もありますが、毎年事例問題が出題されます。事例問題は法22条(各事業年度の所得の金額、益金の額、損金の額)を中心に断的な論点が出題されます。理論問題の中で税務上の仕訳を解答させる問題が出題されることもあります。また、受験生が自分で前提条件を設定して税務上の処理を分岐させるなど難易度の高い問題も出題されます。一方で、届出や申請など手続関連の理論の出題頻度は少ないようです。

 

法人税の理論学習のステップは以下のとおりです。

① 計算に関連する理論から計算と結び付けて覚える。

② 答練や応用理論問題集を用いて理論の柱挙げの訓練をする。

③ 答練で解答の訓練をする。

事例問題の学習方法についてはこちらを参照してください。

 

私は、法人税の理論の問題は考えさせる問題が多く、他の税法の理論の問題と比べると良問と思います。高得点を取れるようになるまでには時間がかかりますが、理論でかなりの差が付くと思います。

 

(3) 計算問題の傾向と学習方法

法人税の第三問の計算問題では、事例に即して税務上の調整金額を計算過程とともに別表四(所得の金額)や別表一(法人税額)に解答する形式の問題が出題されます。また、同時に別表五(一)(利益積立金額や資本金等の額)の作成が加わることがあります。年によっては解答欄自体も設問ごとに分かれていることがあります。

 

近年では別表四の結果を使って別表一を作成させる問題はあまり出ないようです。この点は消費税や相続税の計算問題とは異なります。

どうせ別表四の結果は合わないのですから、それぞれの処理を独立した問題とする法人税の方が良問ではないかと私は思います。

 

簿記論の総合問題とは異なり、個々の処理は基本的に独立しています。個々の処理を確実にマスターすれば合格レベルに達することができます。

標準的な問題を確実に正解し、予備校の配点で30-40点がボーダーとなっているようです。簿記論の第三問(25-30点)財務諸表論の第三問(40-45点)の間となっており、簿記論・財務諸表論と比較すると試験のレベルや合格レベルのイメージが付きやすいのではないでしょうか。

 

(4) 理論と計算のバランス

法人税では、計算ではそれほど差がつきません。まずは、本番レベルの第三問で30-40点が確実にとれるよう計算を仕上げなければいけません。

その上で、べた書きの理論は確実に得点し、事例問題で差を付けなければ合格することはできません。

 

(5) 問題量と時間配分

法人税の本番の問題量は理論の解答量によりますが、合格レベルに達していればぎりぎり最後まで解答できます。合格者は見直しの時間まではないとしても、最後まで問題を解き終えているようです。

時間配分は理論60分、計算60分というのが標準的です。理論⇒計算の順で解く人が多いようです。事例理論の柱挙げなど理論に時間がかかります。計算でそれなりの得点(30-40点)が必要ですので計算の時間が足りなくならないよう時間配分に気を付けなければなりません。答練を通じて時間配分を習得しましょう。

 

法人税は、分量が多く学習が大変で、モチベーションが高いうちに学習した方が良いと思います。初学者も多く受験生のレベルは中程度で、実力通りの結果となりやすい科目と思います。

法人税所得税は税理士試験のヤマ場ですので頑張りましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。