T-アレックスの社会人のための税理士試験講座

社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報を発信しています。金融関係の仕事をしながら官報合格済み。その他キャリアや英語学習の情報も発信しています。

税理士試験は絶対評価!?

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は税理士試験を絶対評価と思って勉強した方がいいというお話です。

 

税理士試験は60点以上が合格と定められているものの、合格率が12%程度になるように点数が調整され相対評価の試験となっています。会計士試験や大学入試なども相対評価の試験です。税理士試験などとは異なり日商簿記2級・3級は70点で合格できる絶対評価の試験となっています。

 

税理士試験では大手予備校の答練で上位3割に入っていることが合格のために必要とされており、自分の順位が気になる受験生が多いと思います。

 

税理士試験の学習の過程で順位は本当に重要なのでしょうか?

私は答練の順位を気にする必要はないと思います。以下を前提とすると、合格レベルは概ね毎年一定しています。

・問題のレベルが毎年概ね一定していること

・合格者数も受験者数も多いこと(母集団が大きいこと)

大学受験とも共通しますが、税理士試験は問題のレベルや傾向が一定しています。受験者数が多ければ得点の分布も正規分布に近似し、上位10%の得点(=合格レベル)もおおよそ一定しています。

 

税理士試験は、1-3人程度しか選出されないオリンピックの代表選考などと異なり、100人単位で合格者が出ます。受験者数(すなわち合格者数)が多い科目であれば、何人か優秀者がいたとしても合格ラインにはほぼ影響がありません。科目選択において私が受験者数の多い科目をお勧めするのは、このように運の要素が少なく合格レベルが明確となりやすい点にあります。マラソン大会で順位を目標にするのではなく、タイムを目標に練習を積んだ結果として目標の順位をクリアしているとうイメージで、税理士試験の学習も自分が合格レベルに達することのみに集中すべきです。

 

答練の受け方でも記載した通り、答練の順位は気にする必要はありません。予備校は長年のデータの蓄積から合格者が正答できる問題と合格者でも正答が難しい問題を把握しています。予備校の解答解説を参考に、初見で正解すべき問題を確実に得点できたかどうか、2回目以降では満点がとれたかどうかを気にすべきです。答練は解答を提出しない通信生も多く、順位や上位何%の得点といったデータは当てになりません。

ただし、公開模試については受験者数が多く、問題の形式やレベルも本番に近いため順位や判定はかなり正確と思います。公開模試については別の機会に書きたいと思います。

 

受験生の方は周りを気にせずに、合格レベルに達することに集中しましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(事業税編)

こんにちは、T-アレックスです。

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今回は事業税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

事業税は第71回(2021年)と第70回(2020年)は大問二問で理論50点、計算50点でした。第69回(2019年)は大問三問で理論55点、計算45点でした。以前は、理論70点、計算30点でした。近年は計算問題が2題構成になり、計算問題の配点が上っているようです。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税消費税相続税国税徴収法と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

国政徴収法:150時間

事業税:200時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

国税徴収法:45題

事業税:35題

 

予備校の標準学習時間には理論の暗記時間は含まれていません。事業税の勉強量は消費税の4割、法人税所得税の2割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-14%程度で他の科目と同レベルです。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

事業税は住民税、酒税法とともに最も受験生が少ない科目の一つです。過去8年で4回、受験者数が最も少ない科目でした。合格者数は40-90人程度と非常に少ないです。1都道府県で1~2人の合格者しかいません。

事業税は法人税学習者が多く受験生のレベルは高いと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 理論問題の傾向と対策

事業税の理論問題は、べた書きと事例問題が出題されます。事例問題もあてはめや柱挙げ自体は容易で実質べた書きの理論となっています。

事業税の理論は計算と関連するものも多く覚え易い方だと思います。合格のためには全ての理論を暗記する必要がありますが、題数も少なく全ての暗記することも十分可能です。

本番の試験では解答の柱は分かり、書くべき理論も暗記していても、書き終える時間がなく速記試験となります。時間内に完答するには理論を省略して解答しなければなりません。理論マスター/ドクターは法令を省略したものですが、そこからさらにどの程度省略しても合格できるのかは誰も分かりません。予備校の模範解答を全部書き終える時間はありません。答練でどの程度省略可能かを習得するのは困難です。

この点が事業税の理論の難しい点だと思います。

 

(2) 計算問題の傾向と対策

以前は計算問題は1題で配点は30点でしたが、近年では計算問題が2題となり配点が50点に上っているようです。計算問題が1題の時は合格者数の少なさからも合格のためには満点が必要でした。近年は計算問題の量が増えており1ミスぐらいなら合格が可能かもしれませんが、合格者の多くは満点を取っているのではないでしょうか。

計算問題は難しくはありませんが、1問につき1箇所は処理に迷うような問題があります。これを正解できるかが計算のキーポイントとなります。その他の定番論点は絶対に間違えることはできません。

計算問題の習得には問題演習を積み重ねることが近道ですが、過去問自体がそれほど難しくなく、予備校のカリキュラムの演習量も十分ではありません。市販の問題集もほとんどありませんので演習不足を補うのは困難です。

 

(3) 法人税との関連

予備校の案内では、(法人)事業税は法人税に関連しているので、事業税は法人税の学習者に利点がある旨の記載がありますが、事業税の学習自体には法人税の学習と重なる部分はありません。

 

4. 合格可能性

事業税は、学習範囲が狭いものの受験生のレベルは高く合格者数が少ないこと、理論暗記はできるものの試験時間を踏まえた解答が難しいこと、計算は高得点勝負でミスが許されないことから、運の要素が強い科目と思います。法人税や消費税などは合格レベルがどの程度かおおよそ見当がつきますが、事業税は合格レベルがどの程度か把握しづらい科目だと私は思います。

 

5. 事業税の選択

私は、答練不足になりがちで合格レベルが明確ではなく、運の要素が強い事業税は選択すべきではないと思います。

唯一事業税を選択しても良いのは、予想外に法人税が合格し1月からの勉強時間に余裕ができた場合に、運よく合格することを期待して1回限定で受験するケースのみだと思います。学習量は少ないため1月からで十分間に合います。

(なお、同様のケースで予想外に所得税が合格した場合には、通常は住民税を選択すると思います。)

不確実性が高いため翌年以降も事業税を受験するのはお勧めしません。ミニ税法であれば、運の要素がほとんどなく、成績上位者から順当に合格する国税徴収法の方がおすすめです。

実務を重視するのであれば、学習量が多く受験生のレベルも高いですが、成績上位者から順当に合格する相続税を選択した方が良いと思います。

 

事業税は速記試験になります。

ボールペンの色は青が見やすく、ゲルインクが使いやすいのではないかと思います。

 

税理士試験の科目別学習ポイント(国税徴収法編)

こんにちは、T-アレックスです。

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今回は国税徴収法の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

国税徴収法税は大問二問でその中に小問がいくつかあります。大問の配点は50点、50点だったり40点、60点だったりします。小問の数も年によって変わります。

配当計算の問題も出題されますが、計算過程と根拠を解答する問題となっており計算問題というより理論の事例問題となっています。理論100%の科目と言っていいと思います。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税消費税相続税と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

国政徴収法:150時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

国税徴収法:45題

 

予備校の標準学習時間には理論の暗記時間は含まれていません。国税徴収法の勉強量は消費税の5-6割、法人税所得税の3-4割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-13%程度で他の科目と同レベルですが、第64回(2014年)以降の8年間で最も合格率が高かった年が第64回(2014年)の14.2%、最も低かった年は第67回(2017年)の10.7%となっています。合格率が高くなるボーナス年がない印象です。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

国税徴収法は、所得税と受験者数が同じくらいです。ミニ税法では消費税が圧倒的に受験生が多いですが、その次に受験者数が多く住民税・事業税の4-5倍、固定資産税の1.5-2倍となっています。

 

国税徴収法は、大学院免除の人や税法初学者が選択することが多く、受験生のレベルは高くないと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 問題の傾向と対策

① 理論の分量と傾向

国税徴収法の理論は題数こそ消費税と同程度ですが、ページ数にすると消費税の1.5倍ぐらいあります。意外と分量があると思います。

私は、理論マスターを見た時に思ったより分厚くてびっくりしました。

小問を含めると理論全体の2-3割は本番の試験で出題されます。5年程度で全範囲が出題されているというイメージです。頻出論点は毎年のように出題され、前年に出題された理論も切り口を変えて連続で出題されることもあります。したがって、Cレベルの論点はないと言っていいでしょう。全ての理論を覚えなければなりません。

全て理論問題でべた書きの問題も出題されますが、横断的な問題、事例問題趣旨を問う問題も多く出題されます。

 

② 学習方法

国税徴収法の理論は、他の税法と比べ理論間のつながりが強いです。カリキュラムが一巡して全体像が分かると理解が進み、理論も暗記しやすくなります。横断的な問題も多く出ますので、早めに一巡して理解を深めましょう。分量こそ多いものの理論間のつながりが強い分、他の税法よりも暗記はしやすいのではないかと思います。

 

③ 趣旨

国税徴収法では趣旨を問う問題が多く出題されます。答練で出た問題は確実に解答できるよう暗記し、予備校のテキストに書かれている法令の趣旨も本番では自分の言葉でいいので解答できるように暗記する必要があります。

 

(2) 配当問題

配当問題は、1で記載した通り、計算過程と根拠を解答する問題となっており計算問題というより理論問題です。配当問題では、滞納者は複数の税金を滞納しており、銀行借入などの私債権も多い複雑な問題が出題されます。配当問題で満点を取ることは可能ですが、他のミニ税法(消費税を除く)と異なり、満点を取るのは簡単ではありません。

配当問題を習得するには、予備校の答練、問題集に加え過去問の配当問題を繰り返し解くことが重要と思います。

 

(3) 過去問

国税徴収法は改正が少なく過去問の研究が有効です。過去問を解くと横断的な問題、趣旨を問う問題が多く出題されていることが分かります。また、配当問題も難しいことが分かります。

予備校では週1回の講義・答練で試験範囲を一通り学習しますが、本番試験の対策には足りない部分があると思います。

自分で20年分の過去問を2周することをお勧めします。過去問と解答・解説は予備校のテキストにあると思います。過去問を解くことで予備校のカリキュラムで足りていない部分を自分で補うことが出来ます。会計科目、国税三法、消費税では予備校のカリキュラムのほかに自分で学習する余裕はなく、また、その必要もないと思います。国税徴収法であればその余裕はあり、かつ、過去問の研究は大変効果が高いと思います。

(4) 時間配分

国税徴収法は、税理士試験の中で唯一見直しする時間がある科目と言われています。解答スピードはそれなりに必要ですが、満点勝負でも速記試験でもなく、落ち着いて試験に臨むことができると思います。

 

4. 合格可能性

国税徴収法は、理論のみで運の要素がほとんどなく、成績上位者から順当に合格する科目と思います。受験生のレベルも高くありません。合格の可能性だけを考えるのであればお勧めの科目です。

顧客が滞納したり納税の猶予を受けようとしたりしない限り使わない科目ですので、実務的な科目ではないと思います。

 

5. 学習スケジュールと選択順序

国税徴収法は、年明けからでも合格レベルに達することは可能と思います。とはいえ、意外と理論の暗記量が多く、全体像を把握するのが重要なため、9月の基礎期から応用期にかけて学習範囲を2周し、直前期に過去問の研究をするのが1年で合格レベルに達するには確実な方法であると思います。

国税徴収法は理論だけですが税法の1科目目や2科目目に選択するのはお勧めしません。最終科目に選択すべきと思います。税法経験者であれば理論暗記の経験があり、初学者に対して有利になりますが、税法1科目目ではそのメリットがありません。また、他の税法では理論と計算を両方学習する必要がありますが、理論のみの学習に慣れてしまうと理論と計算の同時学習に戻るのが大変になります。

 

国税徴収法は、実務は考えずに試験合格のみを目的とし、かつ、税法3科目目であればお勧めの科目と思います。

 

ボールペンの色は青が見やすく、ゲルインクが使いやすいのではないかと思います。

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(相続税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験に合格するための情報をお伝えします。

 

今回は相続税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

相続税は、大問二問で第一問が理論で2問、第二問が計算、配点は第一問の問1と問2で合計50点(内訳は非公開)、第二問50点と毎年決まった問題構成となっています。

 

(2) 第一問(理論)

第一問は理論で2問に分かれています。69回(2019年)までは、べた書きと簡単な事例問題が主に出題されていました。70回(2020年)、71回(2021年)は2問とも事例問題で、自分で場合分けをして解答する法人税でよく見られる形式の問題も出題され、難易度が上っており注意が必要です。

 

(3) 第二問(計算)

事例に即して各相続人等の納付すべき相続税額を解答する問題が毎年出題されます。

 

2. 難易度

 

(1) 学習量の比較

法人税消費税と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

 

相続税の勉強量は法人税所得税の7-8割程度ではないかと思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-13%程度で同レベルですが、第64回(2014年)以降の8年間で最も合格率が高かった年が第64回(2014年)の13.4%となっています。合格率が高くなるボーナス年がない印象です。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

相続税は、会計科目、消費税、法人税に次いで受験者数が多く、所得税より受験者数が多い科目となっています。

相続税は、法人税所得税を合格後に受験する受験生が多く、また、最終科目としている受験生も多いため、受験生のレベルは高いです。私は、税理士試験の科目の中で最も受験生のレベルが高いのではないかと思います。

 

(4) 合格の可能性

相続税は額種範囲が広く内容も複雑であるため、合格レベルに達するまでに相応の時間を要します。成績上位者から順当に合格する科目とは思いますが、受験生のレベルが高く、試験合格の可能性だけを考えるのであれば、相続税を選択しない方が良いのではないかと思います。

 

3. 合格への戦略

(1) 理論問題の傾向と学習方法

① 理論の傾向

理論問題については、事例問題でもべた書で解答できる箇所も多いです。

計算に関連する理論も出題されますが、要件や手続などの記載も求められ、必ずしも計算と結び付けて暗記できるものばかりではありません。また、計算とはそれほど関連しない個別理論も出題されます。

相続税は改正が多い税法といえ、改正論点が出題される可能性が高いです。

 

② 学習方法

本番の試験は計算も含め解答量が多く時間が足りなくなりますので、A、B及び改正論点はペンが止まらないレベルで暗記する必要があります

計算とあまり関連しない手続関連や個別理論の暗記も必要となります。

相続税は受験生のレベルも高いですので、理論暗記の精度も高いレベルが求められると私は思います。

 

(2) 計算問題の傾向と学習方法

① 分量が多い

相続税の計算問題は分量が多く合格者でも解答しきれません予備校による標準的な解答時間では75分程度ですが、各相続人の課税価格と相続税額は全てを集計して記載しようとすると最低10分はかかり解答欄を全て埋めるのは困難です。本番の計算問題を全て埋めようとすると90分はかかるのではないかと私は思います。

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② 法定相続人の判定

相続税の計算問題では最初に法定相続人の判定を行います。

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法定相続分基礎控除額には確実に配点があると思われます。相続人の判定は生命保険金など複数の箇所に関連しており合否に大きな影響があります。養子が存在していたりして親族関係が複雑な問題の場合、法定相続人の判定を慎重に行わなければなりませんが、長くても5分で正解を出さなければ他の問題を解く時間がなくなってしまいます。

 

③ 宅地

宅地は計算パターンが多いです。小規模宅地等の特例も毎年出題され解答量も多くなります。

 

④ 取引相場のない株式

宅地同様、取引相場のない株式も計算パターンも解答量も多く難しいです。

最初の特定の評価会社の判定を間違えると全く得点することができず、最初の判定を慎重に行う必要があります。とはいえ、全体の分量が多いためそれほど時間を掛けることができません。

一般の評価会社の計算パターンも複雑で、問題によっては資料の読み取りに時間がかかり場合もあります。

 

⑤ 戦略

最初に解くことになる法定相続人の判定を、時間を掛けずに正解しなければなりません。上場株式や生命保険金、退職金、債務控除、税額控除など解答量の少ない問題は確実に得点しなければなりません。その上で、宅地や取引相場のない株式等でどれだけ得点を積み上げていくかが合格へのカギとなります。

課税価格と税額の集計をどの程度解答すれ良いかは私には分かりません。理論の時間を考慮すると全ての解答欄を埋める時間はないと思います。

 

⑥ 学習方法

総合問題も個々の論点の積み上げですので、合格レベルに達するには個々の論点を正確かつ迅速に解答できるよう問題演習を繰り返す必要があります。

簿記論、法人税、消費税の計算問題対策では、直前期からは総合問題の答練と解き直しで十分と思いますが、相続税では直前期においても答練の解き直しのほか、個別問題の問題集・トレーンニングも解き直し、解答パターンを体に染み込ませる必要あると思います。

 

(3) 問題量と時間配分

上記のとおり、相続税の問題量は多いです。理論も全て解答しようとすると解答量が多くなりますし、計算も分量が多いです。

理論45分、計算75分が標準的と言われていますが、理論・計算ともに時間が厳しいです。

理論についてはべた書きで対応できる問題は時間を掛けずに解答する必要があります。計算への時間配分を考えて書きすぎないようにしなければなりません。

答練で時間配分の訓練をすることがとても大切です。

 

相続税は、内容が難しく分量も多いです。受験生のレベルも高いですが、やりがいのある科目だと思いますので、頑張りましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

ボーナスを株で貰った時の確定申告の思い出

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

確定申告の季節ですので、今回は税理士試験から離れて確定申告の思い出を書きたいと思います。

 

1. ボーナス支給の状況

かなり昔に働いていた会社で、ボーナスの一部を自社株(上場株)でもらったことがありました。

ボーナスを株でもらってもお金でもらっても所得に違いはないので申告する必要があります。普通であれば貰った株の金額を所得とすればいいのですが、ボーナスの確定する時期に株価が暴落してしまったので、いくらで申告するかが問題となりました。

 

例えば、ボーナス100,000円分を自社株で支給しようとしたとします。ボーナスを確定するときの支給基準日の株価が1,000円だとすると100株をボーナスとして従業員に支給することとなります。

上場企業の場合、インサイダー取引の観点で従業員が自社株を売買できる期間を制限していることが多いです。当時私の働いていたその会社では、従業員がA株の売買ができる期間は決算発表後の1週間程度となっていました。

タイムラインは、ボーナスの支給基準日(A)-決算発表日-売買可能日(B)で、AからBまでは2週間程度の期間があった記憶しています。当時のこの期間はマーケットが非常に混乱していて、AからBの間に会社の株価が暴落してしまいました。

会社としては10万円分のボーナスを自社株で支給したことになっていますが、売買可能期間になってから従業員がその株を市場で売却し実際に手にすることが可能な金額は3万円しかないというような状況でした。

 

2. ボーナス支給時の確定申告

この場合、従業員はいくらで確定申告をするべきでしょうか?

会社は、監査法人から従業員の所得税の申告に関する見解を取得して、従業員に通知しました。

会社からの通知では、①株で取得したボーナスについても給与や現金で受取ったボーナスと同様に確定申告が必要なことに加え、②申告すべき金額は、従業員が株を実際に得ることのできる金額は売買可能日(B)を基準としても問題ないのではないかとの監査法人の参考意見も添付されていました。監査法人は従業員の税務申告の代理人ではありませんが、専門家の意見として確定申告の手助けになるものでした。

 

私は、それほど立場が上ではなかったので株でもらったボーナスはそれほど多くありませんでしたが、会社の通知通り、売買可能日(B)を基準とし、監査法人の意見を参考資料として申告書に添付し確定申告及び所得税の納付をしました。

後で聞いたところでは、多くの同僚も同様の申告をしたようです。

申告してからかなり年数(5年超)が経っていますが、私にも同僚たちにも税務署から特に連絡はなかったので、この申告は問題視されなかったものと思います。

 

3. 売却時の確定申告

数年後に当該株式を売却しました。あまり大きな譲渡益は出なかったと記憶しています。その時も、所得税の申告と矛盾しないよう売買可能日(B)の株価を基準として譲渡益を計算し、自分で作成した明細を添付し確定申告及び所得税の納付をしました。支給基準日(A)の株価を基準とした場合、譲渡損となっていたかもしれません。こちらも、申告してからかなり年数(5年超)が経っていますが、税務署から特に連絡はありません。

 

4. 追徴課税

後日当時の同僚から聞いた話では、株でもらったボーナスについて確定申告をしなかった人がいたとのことです。税務署から税務調査が入り、立場が上で多くの株式をボーナスとして取得していた人は追徴税額が相当の金額になったらしいです。また、追徴課税の基準とされた株価は支給基準日(A)の株価とされたようです。株価はある程度回復していましたが、支給基準日(A)の株価にまでは戻っていませんでした。株を売却しても追徴税額に満たなかったかもしれません。

会社が支給基準日(A)の株価を基準としてボーナスを支給している以上、所得も支給基準日(A)の株価であるとの見解も合理性があるように思えます。

税務署の見解は分かりませんが、きちんと申告した人には売買可能日(B)の株価を基準とすることに一定の合理性があり、担税力(実際に税金を支払う原資があるかどうか)も考慮して許容したのではないかと私は思います。

 

結論としては、確定申告はちゃんとやりましょうということです。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(消費税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は消費税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 消費税の特徴

消費税が他の税法と異なる特徴についてまずは書きたいと思います。

(1) 歴史が浅く影響の大きな改正が多い

消費税は1989年(平成元年)に導入されています。導入後既に30年以上経過していますが他の税法と比べると歴史が浅く、公平な課税等の観点から税額計算や手続の改正が継続して行われています。この10年をみても、軽減税率、高額特定資産の仕入れ等、特定資産の譲渡等、免税事業者・簡易課税の要件の見直しなど、計算にも理論にも大きな影響がある改正が何度も行われています。

 

(2) 年々試験が難化

消費税の制度自体が年を経過するごとに複雑になっています。税理士試験の学習範囲も年々が広がってきており内容も難化しています。理論の題数では40題程度と法人税の1/3、相続税の2/3程度となっていますが、内容からはミニ税法ではないと思います。各予備校の講義では国税三法は週2回の講義で、消費税は週1回となっているようですが、もはや週1回では厳しい分量ではないかと思います。

10年前であれば、年明けからの学習でも合格レベルに達することができたかもしれませんが、現在の消費税の内容・分量では9月から学習しないと8月の本番に間に合わないと思います。

今と昔の消費税は違いますので、大昔に受験した人の意見を真に受けてはいけません。

今後も、制度の複雑化は止まりませんので、とにかく早く合格することをお勧めします。

 

2. 試験の概要

(1) 問題構成

消費税は、大問二問で、第一問が理論で2問、第二問が計算、配点は第一問の問1と問2で合計50点(内訳は非公開)、第二問50点と毎年決まった問題構成となっています。

 

(2) 第一問(理論)

第一問は理論です。2問に分かれており、1問は取引区分に関する問題が小問形式で出題されます。もう1問は、規定のべた書き、届出関連や記載事項など計算問題とは結び付かない問題が多く出題されています。

 

(3) 第二問(計算)

事例に即して消費税額を解答する問題が毎年出題されます。原則課税と簡易課税の2問形式となることも多いです。

 

3. 難易度

(1) 学習量

法人税 と同様に予備校の標準学習時間と理論の題数で比較してみます。

 

・予備校の標準学習時間

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

・理論の題数

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

理論の題数は少ないのですが理論間の関係が複雑で難しいことや計算の量がそれなりにあることを考えると、消費税の学習量は法人税所得税の6-7割程度と思います。

 

(2) 合格率

合格率は11-13%のことが多く他の科目と同レベルです。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

消費税は、会計科目に次いで受験者数が多い科目となっています。

 

消費税は、法人税所得税の次に選択するか、会計科目の次に最初の税法科目に選択する人が多いようです。また、大学院免除の受験生が選択することも多いようです。税法初学者が相当数いるため会計科目ほどではありませんが受験生のレベルはそれほど高くはなく中程度と思います。

 

(4) 合格可能性

消費税は年々難化していますが、受験者の絶対数が多く、受験生のレベルが中程度であることから、他のミニ税法と異なりワンミスが致命傷になるようなことがありません。また、試験問題もオーソドックスなものが多く成績上位者から順当に合格する科目と思います。

ミニ税法と思わずに、1年間しっかりと学習すれば合格レベルに達することができると思います。

 

4. 何科目目に受験するか

消費税は実務に直結する科目と言われており、分量・難易度も全科目の中でも中程度であることから、全受験生が受験すべき科目といえます。

では、何科目目に受験すべきでしょうか?

消費税の合格だけを考えるのであれば、法人税所得税の学習の後の方が良いと思います。理論学習や理論の計算のバランスについてのノウハウが既にあり、初学者に対しては大きなアドバンテージとなります。分量が法人税所得税より少ないので、油断しなければ早期に合格レベルに達することができると思います。

一方で、法人税で書いた通り官報合格までのトータルのスケジュールが考えた場合には、簿記論・財務諸表路の本番の出来次第で税法の1科目目に選択するのも良いと思います。税法の1科目目はどの科目を選択しても理論学習の経験値がなく厳しく、税法学習経験者と比べる不利な面もありますが、消費税は初学者も多いので上位10%に入ることは十分可能と思います。

 

5. 合格への戦略

(1) 理論問題の傾向と学習方法

消費税の理論問題では1問は取引区分に関する小問形式の事例問題が出題されます。事例問題に対応するためには、まずは計算と結び付けて理論を覚え、その後、事例に即して簡潔に解答できるよう答練や応用理論問題集を用いて訓練します。消費税の事例問題は法人税ほど難しくはないので、合格するためには高得点が必要となります。

事例問題の学習についてはこちらを参照してください。

 

理論問題のもう一問は個別理論となることが多いです。個別理論のべた書きで対応できる問題もありますが、届出関連や納税義務など横断的な問題も出題されます。届出関連、帳簿や請求書等の記載事項などは必ずしも計算とは結び付きませんので別途暗記する必要があります。

 

私は、計算とリンクして学習できる事例問題や横断的な論点は考える問題として結構学習が楽しかったと記憶しています。一方で、帳簿の記載事項(氏名、年月日、内容、対価の額)などは何のために暗記が必要か理解不能で苦痛でした。(そもそも氏名、取引日、取引内容、対価の額などは帳簿や請求書に記載するのは常識の範疇で、試験で暗記させる必要があるでしょうか??)

 

なお、消費税の理論は題数こそ少ないものの、覚えにくいと思います。

例)「○○があった日の属する事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に終了した各事業年度

法律的な正確性を追求するとこのような文章になるのだと思いますが、一般的には見慣れない日本語の使い方と思います。

 

(2) 計算問題の傾向と学習方法

計算問題は事例形式で税額計算を行う総合問題が出題されます。原則課税と簡易課税の両方の問題が出題されることも多いので、原則課税にヤマを張ることはできません。

問題量は多いのでスピード勝負となります。できる限り機械的に解答できるよう計算パターンを完全に習得する必要があります。個々の処理を正確かつ素早く行い、標準的な問題を確実に正解して得点を積み上げます。最終値は合いませんので気にする必要はありません。計算問題へのアプローチは簿記論や法人税の第三問と同じです。合格ラインは予備校の配点で35-40点といったところです。

 

(3) 問題量と時間配分

消費税の本番の問題量は理論の解答量によりますが、合格レベルに達していればぎりぎり最後まで解答できます。合格者は見直しの時間まではないとしても、最後まで問題を解き終えているようです。

時間配分は理論45-60分計算60-75分というのが標準的です。理論の分量によって時間配分が変わります。理論⇒計算の順で解く人が多いようです。計算の問題量が多く(特に2問構成となっている場合)それなりの得点(35-40点)が必要ですので、できる限り計算に使える時間を多く確保しなければなりません。

理論では定番の事例問題を素早く解答することと、べた書きの問題を書きすぎないことが重要と思います。答練を通じて時間配分を習得しましょう。

 

(4) 他のミニ税法と比べた消費税の難しさ

① 中小事業者に係る制度が難解

消費税では、中小事業者の担税力や事務処理能力等に配慮して、事業者免税制度や簡易課税制度などの特例制度が設けられています。こうした中小事業者向けの特例制度を巡っては、恣意的な制度選択を通じた租税回避的な行為が問題となり様々な改正が行われております。

その結果、課税事業者・免税事業者の判定、課税事業者や簡易課税の選択/選択不適用の届出の要件などが複雑となっています。計算にも関連し、また、複数年の影響を考えなければなりません。他のミニ税法とは制度の複雑さが段違いで、理解に時間がかかると思います。

 

② 計算量

消費税の計算では、取引区分が重要で計算の7-8割を占めるといっても過言ではありません。各取引を区分(課税(10%、8%))、免税、非課税、課税対象外)に区分するですが、基本的に事業者が行った取引全てを区分する必要があります。様々な取引があるので取扱通達の数も多く、取引ごとの膨大な処理を覚える必要があります。計算量の多さは他のミニ税法とは比較にならず、国税三法並と思った方がいいです。

 

消費税は、もはやミニ税法ではないと思います。年々難化していきますので早期に合格するよう頑張りましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。

税理士試験の科目別学習ポイント(法人税編)

こんにちは、T-アレックスです。

このブログでは、社会人が働きながら税理士試験を合格するための情報をお伝えします。

 

今回は法人税の学習のポイントについてのお話です。

 

1. 試験の概要

(1) 問題構成

法人税大問二問で、第一問が理論で2問、第二問が計算、配点は第一問の問1と問2で合計50点(内訳は非公開)、第二問50点と毎年決まった問題構成となっています。

 

(2) 第一問(理論)

第一問は理論で2問に分かれています。法人税の理論問題は、用語の意義や規定のべた書きの出題もあるものの、事例問題が多く出題され、税務上の仕訳を解答させる問題が出題されることがあるのが大きな特徴です。

 

(3) 第二問(計算)

事例に即して税務上調整すべき金額(別表四)を解答する問題が毎年出題されます。合わせて利益積立金額や資本金等の額(別表五(一))の作成が加わることがあります。

 

2. 難易度

(1) 学習量の比較

法人税の最大のポイントは試験範囲が膨大であるという点です。合格レベルに達するまでにかなりの学習量を必要とし、合格までに長年かかっている人も多いです。

予備校の標準学習時間と比較すると以下の通りとなっています。

簿記論・財務諸表論:450時間

法人税所得税:600時間

相続税:450時間

消費税:350時間

 

理論の題数で比較すると以下の通りです。年や予備校によって題数が変わりますのでおおよその目安です。理論の題数の方が科目ごとのボリュームが分かり易いと思います。

法人税:125題

相続税:65題

消費税:40題

 

(2) 合格率

合格率は11-13%のことが多く他の科目と同レベルです。

 

(3) 受験者数と受験者のレベル

科目別の受験者は以下の通りです。

法人税は、会計科目と消費税に次いで受験者数が多い科目となっています。毎年、所得税のおよそ3倍の人が受験しています。

 

法人税は会計科目の次に最初の税法科目に選択する人が多いです。税法初学者が相当数いるため会計科目ほどではありませんが受験生のレベルはそれほど高くはなく中程度と思います。

 

(4) 合格可能性

試験範囲が膨大なため習得するのに時間がかかります。しかしながら、受験者の絶対数が多く、受験生のレベルが中程度であることから、ミニ税法と異なりワンミスが致命傷になるようなことがありません。また、試験問題もオーソドックスなものが多く成績上位者から順当に合格する科目と思います。

 

3. 法人税所得税

税理士試験で官報合格をするためには、法人税所得税に合格する必要があります。どちらを選択した方がいいでしょうか?

法人税所得税では合格に必要な学習量に大きな差はないようです。

両科目を学習する人は、法人税所得税の順番が多いようですが、所得税法人税の順で学習する人は多くないようです。

受験者が多いことと初学者が多いことを考えると、私は法人税の方が合格しやすいのではないかと思います。

とはいえ、学習量や難易度に大きな差はないようですので、個人の好みによります。

 

4. 法人税を何科目目に学習するか

法人税を何科目目に学習するかは、社会人が税理士試験を早期に合格するために重要な要素となります。1,2科目目は簿記論と財務諸表論になりますが、法人税を3科目目とするか、先に別の税法を学習するかが問題となります。法人税の試験の特徴も踏まえ以下の点がポイントとなります。

  • 法人税1年目は法人税1科目に専念した方がよいです。試験範囲が広く、働きながら複数科目を学習して、1年で法人税の合格レベルに達するのはかなり難しいです。
  • 法人税では、企業の会計処理に基づき税務上の調整を行うもので、会計処理と税務処理の違いを把握して、税務上の仕訳を切ることもあるため、簿記論・財務諸表論の直後に学習した方が効率が良いです。
  • 多くの学習量が必要となるため、モチベーションの高い早期に学習した方が良いです。一般的に年数が経つと勉強に飽きてきたりして税理士試験の勉強へのモチベーションが下がります。モチベーションが下がっていると法人税の合格レベルに達するまでの勉強をするが困難です。
  • 税法初学者には理論学習のハードルが高いため、消費税を先に学習して税法の理論学習のノウハウを獲得してから法人税を学習するのも効率が良いです。

 

上記と1年目の簿記論・財務諸表論の本番の出来を踏まえ、私は、以下のように選択するのが良いのではないかと思います。

(1) 簿記論・財務諸表論ともに合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から法人税に進む

(2) 財務諸表論のみ合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から法人税又は消費税に進む。計算のみの簿記論であれば法人税との両立も可能と思いますが、簿記論の完成度次第と思います。簿記論にそれほど時間をかけなくても良さそうであれば法人税を選択し、簿記論に多くの勉強時間が必要と思われる場合には、消費税を選択するのが良いと思います。

(3) 簿記論のみ合格の可能性が高い場合 ⇒ 9月から消費税に進む。理論のある財務諸表論と法人税1年目の両立は厳しいと思います。

(4) 両方不合格の可能性が高い場合 ⇒ 簿記論・財務諸表論のやり直し税理士試験からの撤退

 

5. 合格への戦略

(1) 会計の知識

上記4でも記載しましたが、法人税は、企業の会計処理に基づき税務上の調整を行うものです。会計処理と税務処理の違いを把握することが重要で、税務上の仕訳を切ることもあるため、会計の知識が必要となります。簿記論・財務諸表論の記憶が薄れないうちに法人税の学習をすることをお勧めします。

 

(2) 理論問題の傾向と学習方法

法人税の理論は125題程度と非常に多いです。

本番の理論問題では、用語の意義や要件などべた書きで解答する問題もありますが、毎年事例問題が出題されます。事例問題は法22条(各事業年度の所得の金額、益金の額、損金の額)を中心に断的な論点が出題されます。理論問題の中で税務上の仕訳を解答させる問題が出題されることもあります。また、受験生が自分で前提条件を設定して税務上の処理を分岐させるなど難易度の高い問題も出題されます。一方で、届出や申請など手続関連の理論の出題頻度は少ないようです。

 

法人税の理論学習のステップは以下のとおりです。

① 計算に関連する理論から計算と結び付けて覚える。

② 答練や応用理論問題集を用いて理論の柱挙げの訓練をする。

③ 答練で解答の訓練をする。

事例問題の学習方法についてはこちらを参照してください。

 

私は、法人税の理論の問題は考えさせる問題が多く、他の税法の理論の問題と比べると良問と思います。高得点を取れるようになるまでには時間がかかりますが、理論でかなりの差が付くと思います。

 

(3) 計算問題の傾向と学習方法

法人税の第三問の計算問題では、事例に即して税務上の調整金額を計算過程とともに別表四(所得の金額)や別表一(法人税額)に解答する形式の問題が出題されます。また、同時に別表五(一)(利益積立金額や資本金等の額)の作成が加わることがあります。年によっては解答欄自体も設問ごとに分かれていることがあります。

 

近年では別表四の結果を使って別表一を作成させる問題はあまり出ないようです。この点は消費税や相続税の計算問題とは異なります。

どうせ別表四の結果は合わないのですから、それぞれの処理を独立した問題とする法人税の方が良問ではないかと私は思います。

 

簿記論の総合問題とは異なり、個々の処理は基本的に独立しています。個々の処理を確実にマスターすれば合格レベルに達することができます。

標準的な問題を確実に正解し、予備校の配点で30-40点がボーダーとなっているようです。簿記論の第三問(25-30点)財務諸表論の第三問(40-45点)の間となっており、簿記論・財務諸表論と比較すると試験のレベルや合格レベルのイメージが付きやすいのではないでしょうか。

 

(4) 理論と計算のバランス

法人税では、計算ではそれほど差がつきません。まずは、本番レベルの第三問で30-40点が確実にとれるよう計算を仕上げなければいけません。

その上で、べた書きの理論は確実に得点し、事例問題で差を付けなければ合格することはできません。

 

(5) 問題量と時間配分

法人税の本番の問題量は理論の解答量によりますが、合格レベルに達していればぎりぎり最後まで解答できます。合格者は見直しの時間まではないとしても、最後まで問題を解き終えているようです。

時間配分は理論60分、計算60分というのが標準的です。理論⇒計算の順で解く人が多いようです。事例理論の柱挙げなど理論に時間がかかります。計算でそれなりの得点(30-40点)が必要ですので計算の時間が足りなくならないよう時間配分に気を付けなければなりません。答練を通じて時間配分を習得しましょう。

 

法人税は、分量が多く学習が大変で、モチベーションが高いうちに学習した方が良いと思います。初学者も多く受験生のレベルは中程度で、実力通りの結果となりやすい科目と思います。

法人税所得税は税理士試験のヤマ場ですので頑張りましょう。

 

今回はここまでとなります。

よろしくお願いします。